「僕と核」
    (2006)

2. ウランってなに?


92番の方、登場してください。ウランさんです。

ウランとは、自然に存在する資源の中では最も重い原子で、約45億年前に地球が誕生したときの高熱でつくられました。主な産地は、オーストラリア、カナダ、東ヨーロッパ、アフリカなどです。

ウランの使い道は、放射能が発見されてから40年近く経って初めて明らかになりました。ヨーロッパの科学者たちは、水の中でウランの原子核に中性子を命中させると、核が暴発することを発見しました。この現象を「核分裂」と言います。ウランほど重い原子の核は、中にたまっている力が強いために、まさに一触即発状態だったのです。



<核分裂の仕組み>


原子の核分裂が起きると、三つのものが産まれます。

一つ目が、中性子の粒子です。この中性子が、連鎖反応の立役者です。

二つ目は、熱として発散されるエネルギーです。
核の中身をつないでいた核力がはじけることによって、生成物の核力との差がエネルギーとして放出されます。同時に、僅かな質量が消えて膨大なエネルギーに変換されるという、アインシュタインの有名な「E=MC2」が示す現象が起きます。これらが、合わせて強烈なガンマ線によるエネルギーを出してまわりの分子を熱くします。

そして三つ目が、核が分裂した後の生成物です。
分裂前の質量のほぼ全てが、生成物に変身します。原子力発電のためには、ウランの核分裂による熱だけが必要なので、これらは燃料を取り替えるときにゴミになります。


<ウランとプルトニウム>

ウランの中に0.7%の割合で存在する「ウラン235」という原子は核分裂を引き起し易く、連鎖反応によって核分裂を何百万回に達するまで倍増させていけば、膨大なエネルギーを瞬時につくれることが発見されました。

この核分裂のエネルギーを利用して、ウラン235を90%以上までに濃縮したものが、
1945年に広島に落とされた原子爆弾「リトルボーイ」に使われました。

原子力発電の燃料には、ウラン235を3%くらいまで軽く濃縮したウランが使われています。発電所のほかにも、潜水艦や人工衛星、宇宙開発などの燃料にも使われています。

原子と数の表記は、「同位体=どういたい」と言って、同じ元素でも中性子の数が異なって存在する場合に、区別をするために使います。元素名の後にくる数字は、陽子+中性子の数です。

核分裂は、ほかの重い原子でも起こせますが、無制限リーチの連鎖反応を起こせるのはごく僅かで、ウラン235とプルトニウム239が主な同位体です。

プルトニウムは、自然界にはまったくと言って良いほど存在しないのですが、ウランの核分裂の副産物としてつくられます。プルトニウムはウランに比べて何倍も核分裂がしやすい物質であることから、より厳重な取り扱いが要求されます。

プルトニウムは、1945年に長崎に落とされた原子爆弾「ファットマン」に使われました。そもそも原子炉と再処理工場は、第二次世界戦中に開発された、ウランからプルトニウムを抽出するための軍事技術だったのです。だから、今日でも国家が新しく原子力を持つということは、いくら発電目的と言っても、政治的な脅威とされるのです。

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