LOVERS ROCK

その人を思うだけで、宇宙が二倍の広さになる。顔を浮かべると、胸が締め付けられ、他に何もいらない、と広大な空と澄んだ心が一つになる。それはあなたが恋をしている証ですな!日本の人口のみならず世界の人口60億人の中から、恋愛の対象になる人の性別、年齢、性格、住所、これらの要素プラス出会い、タイミングなどを挙げると、的は案外絞られてくると同時に、必然の糸さえ見えてくる。恋愛とは未知なる運命の予知夢であり、想像力が磨かれ、行動力が試されるリアルタイム人生劇場であります。その魔力に捕らわれると、街に出れば信号から何からすべてが輝いて見える。緊迫した魂は完全燃焼を切望し、肉体は何かを産みたいと言う原始的な欲望に刈られる。そして、恋をしている人の相手が、そう、自分でなければいけないという念に日々追われて行く。

大衆の娯楽とは対極的な、自分だけの美を見つける、この使命は妥協なき探究心に表れる。常識の世界を遮断し、失敗の二文字を頁ごと焦がしてしまう情熱は、限界を知りたいという誘惑と危険性をも伴う。友情と愛情の紙一重では支えきれない重圧。思考の特急列車が通り過ぎる間に、踏み切りを飛び超えて気持ちを伝えたい、というもどかしさに全身が疼く。一途な感情の海が、平静を装う理性の山と千秋楽に相撲を取る。勝者は生命という壮大な額の中にエロスを発見し、その情景の延長線上にあるすべてに身を捧げる。愛とは、教わる前に産まれ持った、あらゆる知恵を司る生命の根源であった。人を好きになる理由、それは対象が人に限らず、芸術や運動や思想だろうと、好きになること自体こそが、その人の生きる理由だからだ。

まったくの偏見だが、男女間には、恋愛の価値観に根本的な違いがあると思われる。男は、一番好きな人を本能的に追い求める。だから簡単には諦めないし、逆に自分が好きじゃない人に迫られてもピンと来なかったりする。一方で、女性は自分を一番大切にしてくれる人を生理的に探している。だから、好きになっても振り向いてもらえないような人より、自分を地の果てまで追いかけて来て、無条件の愛を高らかに宣言する人につい傾いてしまう。「男は目で恋する、女は耳で恋する」とも言う。目を閉じて、耳を塞いだときに誰の顔が浮かぶだろうか。