虹の橋


俺の生まれはサウパウロ、名前はカルロス
あだ名はコスモ、スターって意味さ
日系五世のミックスだ 母国語はもちろんportuguese
リベルダージの安宿で片言の日本語で働いてたら
来る観光客、皆良い奴「日本に来たら連絡くれよな」
俺はチャンスを狙ってたんだ
飛行機代もこつこつ貯めてた、三年がかりで切符を買った
インターネットで言葉をマスター
留学する気はなかったな 夢は地元でクラブをやることだった
百年前やってきた家系だ あちこちの農場で汗水たらして
今があるんだよ、obrigado 今度は俺の番だ、ta ligado?
運の女神は気まぐれだけど自分だけのモノにしたかった
俺には彼女がいた イザベラはエメラルドみたいな目をしてた
でも彼女はある日去って行った あの約束はどうなっちまった
噂ではジャポンに出稼ぎに行った ベラ君は何が欲しかったんだ
君のRealになりなたかった だから今はdineiroが全てなんだ
甘い鼻歌が今も聞こえる あの頃はどんなにすさんだ時だって
君は俺の胸に頭をおいて こう口ずさんだ

「虹の橋の向こうには 宝物が待っているんだって
 虹の橋のふもとには 宝物が埋まっているんだって
 虹の橋の向こうには 宝物が待っているんだって」

 豊かな国のジャポンから、飛ばす虹色のシャボン玉

ジャポンに着いたら始めは良かった 訪ねた友達も泊めてくれた
でも働き口が続かなかった ついに皆に愛想尽かされた
路頭に迷っててケンと出会った 彼は同じ日系だった
明るい奴ですぐに打ち解けて、その勢いで転がり込んだ
ケンも国に彼女を置いてきてた 毎週プレゼントを送ってた
金に困ってた俺に仕事を紹介すると、ある人に会った
片目が見えないおっさんは 骨董品の店をひっそりやってた
裏に通されたら宝石やら盗品だらけのビジネスだった
「見てくれ近いし使えるよ」そこはビザ切れガイジンの巣窟だったが
どいつも話が早かった、同じ経験をしてきたからだ
体ひとつでどうにかなるかと頑張っても、肌の色だけは
濃さによって人の目の色が変わるのをさんざん見てきた結果
自棄になるのも仕方なかったな 正直俺も麻痺してたんだ
じゃなきゃ真面目に稼いでた 俺は空き巣の仕込みと見張りをやった
なけなしの銭で酒を呑んだ
コンビニのレジがガイジンの時は流石に目を合わせられなかった
割れた鏡を見たくなった

「虹の橋の向こうには 宝物が待っているんだって
 虹の橋のふもとには 宝物が埋まっているんだって
 虹の橋の向こうには 宝物が待っているんだって」

 豊かな国のジャポンから、飛ばす虹色のシャボン玉

親からの手紙でやっと目が覚めた
仕送りいらないよ、と書いてあった
その気遣いに涙がこぼれた、ろくな息子じゃなくてごめん
器用は奴はいくらでもいるけど、俺は差別の壁にぶち当たった
日本に産まれても出れない奴らや 出れても出ない奴らにも会った
なんなら帰れるうちに帰ろう 何故かイザベラが恋しくなった
でも俺には金がなかった その晩、バーでケンに打ち明けたら
最後の仕事に誘われた「最後だから派手に行こうぜ、な?」
ケンも足を洗うつもりだったが本当は薬にハマってた
「このヤマをヒットしたら、ボスに言わずに一緒に帰れるかな」と笑った
「アミーゴ、ようお前にお似合いだぜコスモスだよ、何、ただのbancoだ」
代わりばんこに調べに行った 並ぶと警備員に怪しまれた
並んだだけなのに、とムッと来たがなんだか可笑しくなった
何度も何やってんだ、と我に返ったけど、失うものさえ分からなかった
仕事は驚くほど簡単だった、俺は車で待ってただけだ
取り分はちょうど100万だった その足で空港リムジンに乗った
流れる景色は白かった、西の空には虹がかかってた