Hayabusa 「隼」

隼は見ている 隼は見ている
山が禿げて行くのを隼は見ている
黒目勝ちな瞳 映る島を偏に
黒尽くめの人に 譲る気は藻屑に
四季折々の模様は 移りにけりな
建物は無地のまま 未だ無地のまま

隼は聞いている 隼は聞いている
太陽と風を浴びて 寡黙に聞いている
自然と共に生きる術 くちばしに宿っている
毅然たる態度に 逞しいあしゆび
首を振るに値する 音を篩う日々

隼は留まっている 隼は留まっている
やぶさめの弓のように危うげにしなっている
枝の上から矢のように直線状に飛翔する
かやぶきの屋根のようにひっそりと消えてゆく
一族とヒナのため つがいで狩りに出る

隼は飛んでいる 隼は飛んでいる
時代の風に乗って、潮を読んでいる
どんな些細な変化も 羽の先で感じ取る
魚の群れは 無言で訴える
砂の上の櫓は いつか崩れると

隼は知っている 隼は知っている
ヘルメットがやってくるのを隼は知っている
寝る暇を惜しんで  人は考える
青写真を脇にかかえ お使いに奔っている

隼は鳴いている 物憂げに鳴いている
夜の沖に響く汽笛に応えて鳴いている
四年に一度船頭に立つために舞い降りる
海と船とひとつになって神を讃える

隼は待っている 隼は待っている
島に民が戻って来るのを